ガルシア・マルケス『コレラの時代の愛』からアスパラギン酸へ

 毎日毎日休みなく料理を作らなければならないというのが、悩みの種だった。時間がくればむろん出さなければならないその料理は、完璧でなければならないし、こちらから尋ねたりせずに夫の食べたいものをちゃんと出さなければならなかった。家庭内のさまざまな儀式のひとつとしてたまに尋ねることもあったが、彼は新聞から顔を上げようともせず、《何でもいいよ》と答えた。およそ亭主関白とは縁遠い人間だったので、穏やかな口調で本心からそう言っていた。しかし、いざ食事ということになると、何でもいいというわけには行かないので、彼が食べたいと思っているものを好みに合わせて作る必要があった。牛肉は牛肉の味がしないように、魚は魚の味がしないように、豚肉は疥癬の味がしないように、鶏は羽の味がしないように調理しなければならなかった。アスパラガスは、彼が用を足したときにいい薫りがして気分がよくなるように、季節外れでどれほど値が張ってもどこかで手に入れなければならなかった。それもこれも彼が悪いのではなく、人生が悪いのだ、と彼女は考えていたが、人生の仮借のない主人公が彼であることは間違いなかった。ほんの少しでもおかしいなと思ったら、テーブルの上の料理を横にどけてこう言った。《この料理には愛がこもっていない》。そういう感覚には驚くほど鋭いインスピレーションが備わっていた。あるとき、カモミールハーブティーを一口飲むとそれをつき返して、一言言った。《何だこれは、窓の味がするぞ》。彼女と女中たちは煮立てた窓など飲んだことがなかったので、それを聞いてびっくりした。しかし、いったいどういうことだろうと思ってそのハーブティーを飲み、たしかに窓の味がすると分かって納得した。

            (ガルシア・マルケスコレラの時代の愛』)

 

体内のアンモニアの排泄に関わっているアミノ酸は、アスパラギン酸グルタミン酸、アルギニンのようだ。
また、アンモニア分子は窒素を中心とする四面体構造を取って」いるウィキペディアので、体内の窒素代謝アンモニア代謝は深く関わっていると思われる。窒素バランスをコントロールしているのが、バリンである。
これらの栄養素が働いて、体内のアンモニアは肝臓で無毒化され、哺乳類では尿素に変換された上で貯蔵、排泄される(ウィキペディア

 

アンモニア尿素やグルタミンに変換され無毒化されると独特の臭気もなくなって「いい薫り」がするのかどうかは知らないが、サイドにリンクしているアミノ酸白書』でこれらの栄養素について調べていたので、コレラの時代の愛を読み返していて上に引用した「アスパラガスは、彼が用を足したときにいい薫りがして気分がよくなるように、季節外れでどれほど値が張ってもどこかで手に入れなければならなかった」を目にして、即座に栄養素のことを思い浮かべた。

やはり肉を多食する西洋では、アスパラガス等の野菜を食べることで体臭が変化するということを経験的に知っているのだろうか、と思ったのだった。あるいは、ガルシア・マルケスの博覧強記が表れているということなのかも知れないが・・。

 

ところで、下の引用では、アスパラギン酸は加熱によって構造が壊れてしまうと記されているのだが、成分表では、アスパラガスのアスパラギン酸グルタミン酸も生より油いための方が含有値が高い。

また、『栄養成分バイブル』には、「ある種のがん細胞には体内のアスパラギンをとり込んで勢いを保つ性質がある」と記されているので、摂り過ぎも良くないかも知れない。

逆に言えば、アスパラギン酸の摂取不足がアスパラギンの不足を引き起こし、アスパラギンを構成するアンモニアの処理が正常に行われなくなり、健康に悪影響を及ぼす恐れが強くなります。血液中のアンモニア濃度の上昇は脳細胞に大きなダメージを及ぼす為、アスパラギンアスパラギン酸の摂取は重要な意味を持ちます。
アスパラギンはアスパラガスから単離されたことから、肉・魚・乳製品以外にはアスパラガスに多く含まれています。
アスパラガス以外の野菜にはジャガイモやもやしなどの豆類のスプラウトに含まれています。野菜からの摂取は、アスパラギンアスパラギン酸を同時に摂取できる上に栄養バランス的にも効率が良いという利点があります。
逆に肉類でアスパラギンを摂取しようとすると、たんぱく質代謝量が増えて血液中のアンモニアが増量する恐れが高くなります。肉類を沢山食べる人は野菜の摂取量を増やしたり、運動で汗を掻くなどのアンモニア排出の為の努力を怠らないようにする必要があります。(『アミノ酸白書』「アスパラギン」)

アスパラギン酸は、身体を動かす為のエネルギー代謝たんぱく質代謝の過程で発生するアンモニアを構成する窒素代謝に深く関わる物質となっています。アスパラギン酸アンモニアの排出にも関わっていて、尿の合成を促進することでアンモニアの排出をサポートする働きを持っています。また、アスパラギン酸はカルシウムやカリウムマグネシウムといったミネラルを全身に運ぶ役割を持っており、骨の強化や血液の塩分調整などにも関わっています。
アスパラギン酸はビタミンのように加熱すると構造が壊れてしまう性質があるため、調理の際は加熱しすぎないように注意しなければなりません。前述のように摂取不足は深刻な健康被害を引き起こす恐れがあるため、アスパラガスやもやしで摂取する際には高温で手早く短時間で茹でて、過熱時間を短くするように心がけましょう。(『アミノ酸白書』「アスパラギン酸」)

また、アルギニンの摂取は免疫機能の増強効果や一酸化窒素の合成による血管拡張効果があります。体内に取り込まれた窒素は最終的にはアンモニアとして蓄積・排出されるため、アルギニンはアンモニアを除去する効果も持っているといえます。(『アミノ酸白書』「アルギニン」)

グルタミンは、グルタミン酸アンモニア酵素によって合成されて作られるため、体内での窒素代謝とも深い関係を持っています。しかし、グルタミンは加熱したり酢を加えたりすると変性してしまう性質があるため、なるべく生の状態で食品を食べて摂取しなければならないというデメリットがあります。そのため、効率よくグルタミンを摂取するには魚の刺身や野菜サラダ、牛乳などを盛り込んだメニューやサプリメントの利用が重要になります。(『アミノ酸白書』「グルタミン」)

グルタミン酸酵素の働きによってアンモニアと結合してグルタミンを合成するため、身体に有害なアンモニアの除去にも一役買っています。また、グルタミン酸自体に排尿促進作用があるため、血液中のアンモニア濃度を調節する効果があります。
グルタミン酸の過剰摂取は、睡眠障害神経症・幻覚などの身体に様々な異変を引き起こします。うま味調味料であるグルタミン酸ナトリウムを大量に使った料理を食べた後は強い舌の痺れや頭痛を引き起こします。また、グルタミン酸ナトリウムを過剰摂取したラットには目に障害が現れやすくなるという実験結果があり、過剰摂取は眼病の原因になる恐れがあります。
逆にグルタミン酸が不足すると、不足分をグルタミンから補うことになるため筋力の低下などを招きます。また、疲労の蓄積や脳の働きの低下、アンモニアの排出阻害などの影響が現れます。
グルタミン酸は日本人の食生活では過剰摂取する傾向にありますが、少なすぎても健康に良くないという厄介な性質があるアミノ酸なのです。
グルタミン酸は昆布出汁から発見された経緯から、昆布などの海草や大豆・アーモンドなどの豆類・ナッツ類に多く含まれています。また、玉露などのお茶にもうま味成分としてグルタミンが含まれています。納豆独特のネバネバは、複数のグルタミン酸が結合して出来るポリグルタミン酸と呼ばれるもので納豆の美味しさの土台となっておりかき混ぜればかき混ぜるほど粘りが強くなりうま味が増すという特性をもっています。(『アミノ酸白書』「グルタミン酸」)

バリンは、血液中の窒素バランスをコントロールする効果があります。筋肉には多くの窒素が取り込まれており、窒素バランスがマイナスになると筋肉が分解して窒素を放出して窒素バランスを保とうとします。窒素バランスがプラスになると筋肉は窒素を取り込むことで成長しようとします。バリンの摂取は窒素バランスをプラスにする効果があり、筋肉の成長だけでなく運動能力を維持する上でも重要なアミノ酸として働くのです。(『アミノ酸白書』「バリン」)

 

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