風の匂いの中に

『我らは神の中に生き、動き、存在する』(使徒言行録17:28)

グルココルチコイドと亜鉛、そしてグルタミン酸とビタミンKについての覚書

ストレスなどによるグルココルチコイド分泌増加は海馬神経細胞の興奮性を高める。グルココルチコイド(ミネラルコルチコイド)受容体は、神経終末の細胞膜に存在し、遺伝子発現を介さずにグルタミン酸放出を促進させる。その結果、海馬細胞外グルタミン酸濃度が増加する。また、グルココルチコイド受容体を介したグルタミン酸取り込み阻害も海馬細胞外グルタミン酸濃度を増加させる。急性ストレス負荷に伴う細胞外グルタミン酸濃度の増加はシナプス可塑性や学習・記憶の障害と関係する。さらに、慢性的なストレスによる異常なグルココルチコイド分泌は異常なグルタミン酸シグナルを惹起し、うつ発症や海馬萎縮の要因になると考えられる。
 グルココルチコイド連続投与、あるいは亜鉛欠乏食で飼育したマウス、ラットでは、通常時の海馬細胞内Ca2+レベルが上昇している。さらに、ストレッサーである亜鉛欠乏食で飼育したラットの海馬興奮性を調べてみると、苔状線維終末のグルタミン酸開口放出は亢進しており、CA3錐体細胞は易興奮性である。亜鉛欠乏食飼育によりストレス感受性が増加し、脳の病態が変化する。(略)亜鉛摂取不足はグルタミン酸神経毒性を増大させ、脳の病態を悪化させると考えられる。この際、過剰なシナプスZn2+シグナルは病態悪化に関与する。亜鉛摂取不足によるグルタミン酸神経毒性増大には過剰なグルココルチコイドシグナルが関与するが、長期的な亜鉛摂取不足時には細胞外Zn2+シグナルが不足し、細胞外グルタミン酸濃度の異常な増加に対する細胞外Zn2+シグナルの抑制作用が不十分となるために、グルタミン酸神経毒性はさらに増大されると考えられる。(『亜鉛の機能と健康』p142~143)

以下は、解釈

ここの、「グルココルチコイド(ミネラルコルチコイド)」という表記は、「グルココルチコイド=ミネラルコルチコイド」ということではない。

グルココルチコイドは糖質コルチコイドであり、ミネラルコルチコイドは電解質コルチコイドである。

ここでの「グルココルチコイド(ミネラルコルチコイド)」は、グルココルチコイドの受容体もミネラルコルチコイドの受容体も共に、「神経終末の細胞膜に存在し、遺伝子発現を介さずにグルタミン酸放出を促進させる。」ということを表している、と考えられる。

つまり副腎皮質ホルモンは、グルココルチコイドもミネラルコルチコイドもグルタミン酸放出に関わっているということのように思われる。

 

 

ビタミンKは、アミノ酸の1つであるグルタミン酸からγ-カルボキシグルタミン酸を生成する際に必須である。γ-カルボキシグルタミン酸を含有するたんぱく質としては、プロトロンビンとオステオカルシンが知られている。プロトロンビンには止血作用があり、出血の際に血液凝固因子として働く。オステオカルシンは骨に存在し、骨形成に関与している。(略)
ビタミンKが欠乏すると、γ-カルボキシグルタミン酸の生成が障害されてしまう。さらに、このカルボキシ化が起こらないと、プロトロンピンやオステオカルシンの働きにも障害が現れるのである。(川端輝江=編著『しっかり学べる!栄養学』)

 

ACE2とTMPRSS2の小腸での高い遺伝子発現量から、COVID-19は消化器系(下痢など)の症状を促すことが示唆されている。

実際に武漢で実施された調査によると、比較的軽症で済んだ患者の多くが最初に感じた症状として「下痢」を挙げている。206人の軽症患者のうち、19.4パーセントは下痢が最初の症状で、全体の57パーセントに消化器系の症状があった。それらは平均して5.4日続いたという。

また別の調査によると、新型コロナウイルス感染症の患者204人のうち、腹痛、下痢、嘔吐など、18.6パーセントの患者が消化器官に関する症状を経験していた。

消化器症状のあった患者では、症状のない患者に比べて肝酵素値が高く、単球数が少なく、プロトロンビン時間(血液の凝固異常)が長かったことが報告されている。(抜粋)(https://wired.jp/2020/04/19/covid-19-mechanism/

 

プロトロンピン時間:プロトロンビンは血液凝固の第II因子です。血液が凝固しにくくなると、この時間が長くなります。

https://www.qlife.jp/dictionary/exam/item/i_07500/