風の匂いの中に

『我らは神の中に生き、動き、存在する』(使徒言行録17:28)

ステロイド外用薬とタクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)(アトピーとの闘い最終章)

 

 ステロイド薬の免疫抑制作用は、T細胞に集中的に作用するシクロスポリンやタクロリムスとは異なり、T細胞やB細胞、マクロファージなどあらゆる免疫担当細胞に及び、抗体産生抑制など液性免疫への抑制効果も含め、多彩で非選択的である。しかし、臨床用量でのT細胞の活性化抑制作用はタクロリムスとの比較でも著明ではなく、…。(略)…、このことがステロイド薬の作用が非選択的で、多岐にわたる副作用が発現する原因となる。

 ステロイド薬の細胞増殖抑制作用も非選択的であるが、細胞の増殖や浸潤が生体にとって悪影響を及ぼすような状況下では、特異的でないにせよ好都合といえる。たとえば、白血病悪性リンパ腫の化学療法プロトコールのなかにステロイド薬が組み込まれているのは、この作用があるからにほかならない。しかし、健常皮膚に対する作用、すなわち表皮細胞や線維芽細胞に対する抑制的作用は、副作用としての皮膚萎縮の原因ともなる。(塩原哲夫=編『ステロイド外用薬パーフェクトブック』p11~12)

 

T細胞の活性抑制に対してはステロイドよりタクロリムスの方が有効であるということなのだが、一方で以下のようなネットの情報もある。

 

タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)使用中およびこれから使用される患者さんへ

今回小児用のタクロリムス軟膏の発売に際して,厚生労働省から使用する医師に対して,以下のことを患者さん及び保護者の方にご説明して納得していただいたうえで使用することが義務づけられました.

 マウス(実験用のネズミ)にこのお薬を長期間塗り続けるという実験で,高い血液中の濃度が長期に続いたことより,リンパ腫という癌の増加がみられたこと.

 この薬との関連ははっきりしていないものの,外国において,この薬を使用中にリンパ腫と皮膚癌がみられたことが報告されていること.

https://www.dermatol.or.jp/modules/publicnews/index.php?content_id=2

 日本皮膚科学会のこの記事は2003年12月12日で記されている。

 

 

ADは、1980年代から隆盛になったTh1/Th2パラダイムに基づけば、Th2サイトカインが主役を演じる免疫反応と考えられ、ADイコールTh2病というシンプルな概念が確立された時代もあった。確かに、IgE高値や好酸球増多などはそれを裏づけるもので、病変部や末梢血から得られるリンパ球のサイトカイン産生パターンもTh2に一致するが、さまざまな接触原がADを悪化させることはよく知られており、またADの病理組織所見はTh2よりもTh1が関与する接触皮膚炎に近い。このような矛盾が解決されないまま、Th2に傾いたサイトカインバランスをいかに是正するかがAD治療の目標となり、そのためにTh1サイトカインの投与も行われたが、結果は失敗に終わった。(『ステロイド外用薬パーフェクトブック』p13~14)

赤字表記は、管理人メロメロピーによる

一昨日、私は纏めるだけまとめて最後の詰めでひっくり返ってしまったのだが、その時は、こんな風に最後を書いていた。

そこで私は、純粋にTh2が関与するのはⅠ型アレルギーのみで、Th1はⅣ型アレルギーのみに関与すると仮定しようと思う。そして、Ⅱ型、Ⅲ型アレルギーにはTh17が関与すると思いたい。

しかし、これでは、この本に書かれている以下の内容に矛盾すると思われた。

ステロイド薬はTh1、Th2のいずれをも抑制するが、自然免疫、すなわちTh1の抑制作用が強い。このため急性炎症の鎮静化には優れるが、長期使用を行えばTh2反応へのシフトが起こり、アレルギー疾患憎悪の方向に働く可能性がある。(『ステロイド外用薬パーフェクトブック』)

Th1抑制作用の方が強いステロイド外用薬を使って、娘は、Th1が関与する接触皮膚炎になったのだから。

 

しかし、上に引用した14頁の内容から、私の仮定したことはそれほど間違ってはいなかったように思うのだが、まだまだ分からないことが多い。

そして理論に基づいて行った結果が皮膚に反映されなければ意味がない。