ラットによる実験で、トリプトファンは肝臓の脂肪に変化をひきおこすことがわかっています。肝硬変の患者は、脳内にトリプトファン、つまりセロトニンがふえ、そのために脳の機能が低下して昏睡状態におちいります。長期にわたってトリプトファンを飲み続けるのは危険だということです。この症状を改善するには、トリプトファンの作用を妨げるアミノ酸の投与がすすめられ、これでトリプトファンの脳への移行が妨げることがわかっています。実際に肝硬変の治療食には、トリプトファンやチロシンが少なく、バリン、ロイシン、イソロイシンの多い食品が選ばれています。アミノ酸はどれかひとつだけが多いとすみやかに脳に移行しますが、高アミノ酸食、つまりいくつものアミノ酸が高値で含まれる食事をとった場合は、アミノ酸が脳へ移行するスピードがゆるやかになるのです。(中村丁次=監修「栄養成分バイブル」)
しかし、バリン、ロイシン、イソロイシンを高含有している食品はトリプトファンをも多く含有している。
トリプトファンを多く含む食品
大豆たんぱく、カゼイン、かつお、小麦たんぱく(https://wholefoodcatalog.com/nutrient/tryptophan/)
しかし、トリプトファンの多い食品と分岐鎖アミノ酸の多く含まれる食品が重複する。チーズなどが。
分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)を最も多く含む食品は、共通してカゼイン。
トリプトファン(https://ipidiw.co.jp/nutrition/tryptophan.html)
働き・効果
・肝臓、腎臓で分解されエネルギー源となる
・ナイアシンの原料となる摂取・吸収
・植物性タンパク質が脳内でセロトニンになる確率が高い
・インスリンはトリプトファンを脳に移動しやすくする
・食事以外での摂取はリスクが高いため、特に注意が必要
・腎臓疾患、肝臓疾患、白血球関連疾患の場合は摂取を避ける必要がある
・妊娠中、授乳中の女性は摂取を避ける必要がある
・パーキンソン病治療薬・頭痛薬・疼痛緩和薬・不眠症薬との併用は副作用がある
・抗うつ薬・抗精神薬・抗てんかん薬との併用は深刻な副作用がある
・たんぱく質を含まない高炭水化物の摂取で、トリプトファンは脳に運ばれる量が増える
・炭水化物を含まない高たんぱく質の摂取で、トリプトファンは脳に運ばれる量が減る過剰摂取・副作用
・肝硬変
・脳の機能が低下する
・昏睡状態に陥る
・六十歳以上の場合は、血圧が上昇する
過剰症としては、ナイアシンの大量投与により、消化器系の障害や肝臓疾患(肝機能低下、劇症肝炎)などの例が報告されている。(川端輝江=編著「しっかり学べる!栄養学」)
トリプトファン セロトニンレベルを高めることで、うつ病を改善する。メラトニンレベルを高めることで眠気を起こす。…。トリプトファンのサプリメントは、脳内への取り込みを最大にするために、ビタミンB6、ナイアシン、果物ジュースといっしょにとるのがよい。(生田哲=著「心の病は食事で治す」p126)
生田哲「心の病は食事で治す」のp197以下には「トリプトファンを摂取する際の注意点」として以上に書かれているような内容が記されている。
トリプトファンからはセロトニンができるだけでなく、ナイアシンもできる道がある。もし生体にナイアシンが不足すれば、あなたの摂取したトリプトファンからセロトニンではなく、ナイアシンが優先的につくられる。このため、毎日、ビタミンB群を摂取するのが望ましい。そうすれば、B6とナイアシンが十分なので、摂取したトリプトファンが無駄なくセロトニンに変わる。(生田哲「心の病は食事で治す」p195)
月経前症候群には、エストロゲンの代謝を高める作用があるビタミンB6が効果的です。なお、エストロゲンの分泌が高まると、トリプトファンというアミノ酸の代謝が悪くなり、ビタミンB6の血中濃度が下がるという報告があります。(吉川敏一「ビタミン・ミネラル早わかり」)
VB6はエストロゲンの代謝にも、トリプトファンの代謝にも関わっているということだ。