風の匂いの中に

『我らは神の中に生き、動き、存在する』(使徒言行録17:28)

コラーゲン受容体 GP(glycoprotein) VI について(リンクによるメモと考察)

コラーゲン(collagen)

血管壁の主要な細胞外物質。血管壁の強度を保つ構造タンパク質。人体のタンパク質の約25%を占める。

19種類にも上る分子種が報告されているが、血管壁には線維性コラーゲンであるタイプI、IIIとシート状構造のタイプIVが豊富に存在する。タイプIとIIIコラーゲンは、約100 kDaのポリペプチド鎖3本がへリックス構造をとりながら会合した直径約1.5nm、長さ約300nmのコラーゲン分子が長軸方向に会合し、ロープ状にねじれながら伸張し分子間架橋で補強された構造をしている(図)。コラーゲン分子のへリックス部分には(Gly-X-Y)nで示される規則正しい繰り返し構造が見られ、Xの部位はPro、Yの部位はHyPであることが多く、約10%の頻度で存在する。このGly-Pro-HyPは血小板コラーゲン受容体glycoprotein(GP) VIの結合モチーフであり(1)、血小板刺激薬であるコラーゲン関連ペプチド(collagen-related peptide; CRP)の基本構造として用いられている。タイプIコラーゲンのα1(1)鎖上にはコラーゲン受容体インテグリンα2β1の結合モチーフの一つであるGly-Phe-HyP-Gly-Asp-Argも約0.4%の頻度で存在する(2)。タイプIVコラーゲンは血管内皮基底膜の主要成分で、網目状構造を形成している。タイプIやIIIコラーゲンと異なり、GPVIを介した血小板凝集活性はほとんど認められない(3)。


【病態との関わり】

 コラーゲンは強力な血小板活性化物質であるため、血小板側から検討したコラーゲンと血栓症の関わりについて報告が為されている。実験動物ではGPVIの阻害により脳梗塞巣の縮小が認められていること(4)、急性冠症候群発症リスクとGPVIの発現数に正の相関がみとめられること(5)などである。骨形成不全症は点突然変異でグリシン残基が他のアミノ酸に置換される等の理由によりタイプIコラーゲンの形成不全が生じ発症する遺伝疾患である。タイプIコラーゲンは骨にも多く存在するため、骨形成不全として気付かれるが、血管壁も脆弱となるため打撲時等により血管性紫斑が生じやすい。大動脈弁弁輪拡大や逆流症、僧帽弁逸脱症、動脈解離等が報告されているが、健常人に比べてこれらのリスクが高いのかはわかっていない(6)。Ehlers-Danlos症候群はコラーゲンIやIII、V等の線維性コラーゲンの異常症であり、異なる遺伝子異常により病型が分けられる。血管強度の低下により血管性紫斑が生じやすく、動脈破裂に至る場合もある。血小板凝集活性の異常が生じるとの報告もある(7-9)
https://jsth.medical-words.jp/words/word-250/

 

「タイプIコラーゲンは骨にも多く存在するため、骨形成不全として気付かれるが、血管壁も脆弱となるため打撲時等により血管性紫斑が生じやすい」

コラーゲンは血小板活性化物質だから、コラーゲンによって血栓が生じる可能性があるということだが、タイプ1コラーゲン形成不全では血管性紫斑が生じる、ということでもある。血管性紫斑血小板減少性紫斑病というものと同じかな?

 

GPVI ( glycoprotein VI )

【概要】

 GP(glycoprotein) VIはコラーゲン受容体であり、高ずり応力下ではコラーゲンに結合したフォン・ヴィレブランド因子(VWF)とGPIb/IX/V complexの接着後、最初に血管内皮下のコラーゲンに結合することにより活性化シグナルが惹起され、インテグリンα2β1やインテグリンαIIb/β3の活性化とともに血小板活性化物質(トロンボキサンA2;TXA2,アデノシン二リン酸;ADPなど)を放出させる。近年、ラミニンもGPVIに結合することが報告されている。

 

【構造と機能】

 血小板、巨核球に限定的に発現しているGPVIは、イムノグロブリンスーパーファミリーに属し、Fc receptor (FcR)γ-chain分子のホモダイマーと複合体を形成する61/65kDa(非還元型、還元型)の血小板糖タンパク受容体である。血小板あたり約3,500コピーのGPVIが発現しており、コラーゲンによりGPVIがクラスタリングされるとFyn、LynがFcRγ-chainのimmunoreceptor tyrosine-based activation motif(ITAM; YXXL-(X)10-12YXXL)のチロシンをリン酸化する。Sykがこのリン酸化チロシンに結合し活性化されるとLAT、SLP-76、Val1/3をチロシンリン酸化、Tec/Btkも加わりphospholioase Cγ2(PLCγ2)が活性化される。PLCγ2はPIPをdiacylglyserol(DG)とinositol 1,4,5-triphosphate(IP3)に加水分解する。これらはそれぞれプロテインキナーゼC活性と細胞内ストアからのカルシウムの放出を惹起し血小板を活性化する(図)。

 

【ノック・アウトマウスの表現形、病態との関わり】

 GPVI/FcRγ-chain ノックアウトマウスは、種々の in vivo血栓形成マウスモデルにて血栓生成が抑制されるものの、Tail-bleeding timeが軽度に延長するのみである。また、この血小板はコラーゲン惹起血小板凝集が欠如している.GPVI欠損患者においては、出血症状は一般的に軽度であるが、この患者の血小板もコラーゲン反応が欠損している。

 

【その他】

 血小板の活性化に伴い血小板表面上のGPVIはタンパク質分解酵素であるADAM10により切断され、血中の可溶性GPVI濃度が上昇すると報告されている。可溶性GPVI測定は血栓症診断マーカーとなり得ることを示唆しており、現在ELISA法にて測定可能である。

 

https://jsth.medical-words.jp/words/word-136/

 

血栓にコラーゲン受容体であるGP(glycoprotein)が関わっているということなのだが、glycoproteinというのはコロナウイルスのスパイクタンパク質にあたるものだったかと思う。

Applied and Environmental Microbiology, 81: 1616-1621 (2015)より引用

 

コロナ感染やコロナワクチン接種後の血栓症に、コラーゲン受容体が何か関わっているように思える。