生体内での銅代謝動態は、高親和性のCTR1(略)および銅排出トランスポーターATP7AおよびATP7Bによって恒常性が保持されている。(略)ヒトCTR1は、190個のアミノ酸からなり、N末端を細胞外に、C末端を細胞内に位置する3回膜貫通領域を有する膜タンパク質である。細胞膜上ではホモ3量体を形成して機能していると考えられている。Cu2+に対する親和性は、1〜5μMと非常に高く、エネルギー非依存性でカリウム依存性であることが示されている。CTR1は、ほとんどの組織に恒常的に発現しているが、特に脳の脈絡叢、尿細管細胞、目の結合組織、卵巣、精巣で発現量が高い。(略)
銅の栄養学的意義から、CTR1は消化管での吸収における役割が注目されてきた。ところが、腸管上皮細胞におけるCTR1の細胞内局在はよくわかっていない。腸管特異的なCTR1欠損マウスでは、腸管におけるCu2+の吸収が阻害され、全身性の銅欠乏状態となる。このマウスでは、腸管上皮細胞へのCu2+の流入は障害されていないが、腸管上皮細胞内に銅が蓄積し、細胞内の銅シャペロンタンパク質を介した輸送経路が障害され、血液側に輸送されないために生じているものと考えられる。(略)
したがって、CTR1の機能は、細胞内小胞に取り込まれたCu2+を細胞質へ輸送し、銅シャペロンタンパク質に受け渡すことだと考えられている。(日本栄養・食糧学会=監修『栄養・食品機能とトランスポーター』(建帛社)p233~235)
これを読むと、やはり銅の細胞内蓄積はカリウムの過剰に関連しているように思われる。
亜鉛の吸収は、銅の吸収と拮抗することがよく知られているが、培養細胞を用いた解析ではZIP4による亜鉛輸送は過剰の銅によってもほとんど阻害されない。一方、小腸上皮細胞の刷子縁膜から食事由来の銅の吸収に機能する銅トランスポーターCTR1も、亜鉛を輸送する活性を持たないことが知られている。したがって、亜鉛と銅の拮抗は、小腸上皮細胞刷子縁膜に局在して食事由来の亜鉛や銅を取り込む輸送経路が競争的に阻害されるのではなく、上皮細胞に取り込まれた後に何らかのメカニズムを介して起こっている可能性が高い。細胞質に発言するメタロチオネインは、亜鉛と銅のどちらにも結合できる性質を持っており、両元素の細胞内ホメオスタシス維持に重要な役割を果たす低分子タンパク質である。おそらく、このメタロチオネインのような分子を介した細胞内の亜鉛と銅の存在量の変化が、刷子縁膜で機能するZIP4やCTR1の発現量を変化させ、結果、両元素の吸収を拮抗させているのであろう。(『亜鉛の機能と健康』p161)
この二つを合わせて考えると、銅の細胞内蓄積は低亜鉛状態で細胞内にカリウムが多い場合に起こると思われる。
銅の「過剰摂取・副作用」では、「痙攣」(https://ipidiw.co.jp/nutrition/copper.html)と記されている。
また、「低カリウム血症」で「けいれんが起こる」(https://ipidiw.co.jp/nutrition/kalium.html)と記載されている。「低カリウム血症」というのは、脱水などでカリウムが失われた状態と捉えることができるが、血中より細胞内にカリウムが高濃度に入りすぎている状態であるとも考えられる。
体内亜鉛が少なく、カリウムが細胞内に取り込まれる度合いが高い状態で銅を過剰摂取すると細胞内に銅が蓄積し、痙攣などが起こると考えられる。
カリウムを細胞内に取り込むホルモンについては過去記事で纏めている。