「突然ここで私の足のことを・・(銅欠乏と静脈炎?)」でリンクしたサイトに「銅利用障害である Menkes 症候群」という言い方がされていた。
河端輝江=編著『しっかり学べる!栄養学』では、「メンケス病では、セルロプラスミンが減少し、肝臓や脳の銅不足によって」云々と記されている。一方、ウィルソン病については、「肝臓や脳、角膜へ銅が異常に沈着し、重度の肝障害、腎不全、脳神経障害などを生じる」と記している。
ウィルソン病については、やはり上でリンクしたサイトに、「亜鉛による銅吸収阻害については亜鉛サプリメントや亜鉛製剤を服用した患者で報告され、Wilson氏病の治療に応用されている」と出てくる。つまり、亜鉛と銅の割合で亜鉛の摂取比率が下がると銅が蓄積してくる、その蓄積した銅を亜鉛のサプリメントを服用することで吸収阻害し、治療するということである。
私はずっとメンケス病は単に銅欠乏症で起こるのだと思っていたのだが、銅利用障害と捉えれば、利用障害で、臓器に蓄積するウィルソン病も起こりうるのではないかと思えたのだった。
モリブデンについて記されたサイト(https://ipidiw.co.jp/nutrition/molybdenum.html)には、「過剰摂取・副作用」として、「銅の排泄ができず、貧血を起こす」と「銅欠乏症となってしまう」という、一見すぐには理解できない二つの事柄が併記されている。そして「モリブデンの働き・効果」に「銅の排泄に関わっている」と書かれている。
「銅の排泄に関わっている」モリブデンの過剰で「銅欠乏症となってしまう」のは理解できるが、「銅の排泄に関わっている」モリブデンの過剰で「銅の排泄ができず、貧血を起こす」というのは、そう簡単に理解できる内容ではない。
ここで考えられるのは、モリブデンによって銅が影響を受けているということと、他の一緒に摂取された栄養素の種類によって、銅が利用されてモリブデンによって排泄される場合と、利用されずに蓄積される場合があるということである。
「銅の排泄ができず、貧血を起こす」というのは、亜鉛と銅の割合に関連すると考えられる。貧血というと鉄不足、ビタミンB12不足等が言われるが、亜鉛が欠乏しても貧血は起こる。貧血には亜鉛が根底で関わっていると言える。亜鉛が欠乏すれば銅が体内に蓄積される。ここにモリブデンの過剰摂取が加わって「銅の排泄ができず、貧血を起こす」ということが起こってくるように思う。つまり、銅が同じ臓器に蓄積していくために適切な場所で働くことが出来ない、と。
モリブデンの働きには「鉄の利用率を上げる働き」というのがある。
銅はセルロプラスミンとして鉄輸送に関わっている。
モリブデン過剰で「銅欠乏症になってしまう」というのは、鉄の利用に何らかの形で関わっているモリブデンが過剰となるとき、同じく鉄輸送に関わっている銅は働かされて消費され欠乏すると考えられる。
もう一つ、関連する栄養素がカリウムである。
上の過去記事でも書いたように、銅のトランスポーターは「カリウム依存性」(『栄養・食品機能とトランスポーター』p234)だということだ。
カリウムが足りなければ銅が各細胞に運ばれないということが言えると思う。
生体内のカリウムは、98%が細胞内に、2%が細胞外に存在している。
銅は生体内に約80mg存在し、その約50%が筋肉や骨、約10%が肝臓に分布する。
(河端輝江=編著『しっかり学べる!栄養学』より)
カリウム(https://ipidiw.co.jp/nutrition/kalium.html)
筋肉細胞、骨、脳、肝臓、心臓、腎臓などに多く存在する
また、このカリウムのサイトには、「過剰摂取・副作用」で「不整脈」と記載されている。
銅はシトクロムc酸化酵素の補酵素として心筋の機能に関わっている。
つまりカリウムによって銅が心筋に運ばれて、心筋が正常に働くと言える。
逆から言えば、カリウムや銅の過剰、また不足によって心筋が正常に機能せず不整脈を起こしたり、収縮が上手く行われずうっ血性の心不全に陥るということが言えると考えられる。