風の匂いの中に

『我らは神の中に生き、動き、存在する』(使徒言行録17:28)

柑橘類に多く含有されるリモネンの香り効果

グレープフルーツの香気成分組成

 すべてのカンキツ類精油は、特徴的な成分としてリモネンを含みます。このリモネンという香気成分は、植物種を問わず普遍的に見られる、一般的な香気成分であり、何ら変わったものではありません。カンキツ類の精油の多くでは、このリモネンの値が全香気成分中のほとんどを占めるというところに特徴があります。

(略)

 香りを嗅いでみると、同じカンキツ類の精油でも少しずつ香りが異なることがよくわかります。実は、主成分であるリモネンそのものは、それほど強く精油の香りに寄与しているわけではありません。リモネンを除いた残りの部分にカンキツ精油を特徴づける成分が含まれています。

 グレープフルーツ精油において最も有名で、かつ重要なのはヌートカトンです。ごくわずかしか含まれないこの成分は、グレープフルーツのビターな香りに寄与しています。閾値が低いため、ほんの少しで強く香ります。実際、筆者Nは、グレープフルーツ精油の香りにより自律神経活動の変化が起こることを認めていますが、リモネンのみでなくヌートカトンがその変化の有効成分であることを示す結果も得ています。

 

グレープフルーツの香り効果

 以前、日本テレビの『所さんの目がテン!』という番組のプロデューサーから、「グレープフルーツ精油のダイエット効果について放送したいのだが、ラットではなくヒトでの証拠が欲しい」

 という内容の問い合わせがあり、その試験計画を提案しました。それは、赤外線を使ったサーモグラフィーで被験者の背中の体温を測定し、グレープフルーツの匂いを嗅いだときに体表面温度がどのように変化するかを調べるというものです。

 19歳、21歳、24歳の3名の被験者に水着を着てもらい、半分に切った果物のグレープフルーツを鼻先4㎝のところに置いて、30分間匂いを嗅ぎ続けてもらいました。

 すると90分後、被験者3人の体表面温度が2℃以上増加したのです。

 これは、グレープフルーツの香り刺激には、白色脂肪組織と褐色脂肪組織を支配する交感神経を興奮させる作用があるからです。

 つまり、グレープフルーツの香り刺激によって交感神経が興奮すると、まず、白色脂肪組織で脂肪分解が起こります。次に、脂肪分解によって生じた脂肪酸を使い、褐色脂肪組織が熱を作り出した(熱産生)というわけです。

 そして、熱産生によってエネルギーの消費が促進され、結果、ダイエットにもつながっていくのだと考えられます。

 この話を読んで、みなさんは、「グレープフルーツの香りにダイエット効果があるのだったら、匂いを嗅ぐよりも、いっそのこと食べてしまった方がいいのではないか」と思いませんでしたか?

 これが意外にも、そうではないのです。

 『はなまるマーケット』という番組で、やはりグレープフルーツを使ったダイエットを取り上げるということで、私のところに相談に見えました。話を聞けば、番組では匂いを嗅ぐだけではなく、グレープフルーツを食べなければいけないということでした。これを聞いた私は即刻、

 「食べたら効果がなくなりますよ!」

 と答えました。

 食べ物や飲み物が胃や腸に入ると、胃腸の機能を高めるために、副交感神経が興奮します。それによって、白色脂肪組織と褐色脂肪組織を支配する交感神経が抑制され、脂肪分解の減少、さらに、体温の低下が起こると考えたからです。

 結果は予想通りのものでした。

(略)

 しかし実際、グレープフルーツ精油の香りによる匂い刺激は、胃腸を支配する副交感神経である迷走神経を抑制するため、消化・吸収機能が低下し、刺激が遷延すると食欲が低下します。さらに、白色脂肪組織と褐色脂肪組織を支配する交感神経を興奮させることにより、白色脂肪組織に蓄積する中性脂肪の脂肪分解を促進します。また、脂肪分解で生じた脂肪酸をエネルギー源として、褐色脂肪組織での熱産生を増大させます。結果として、体脂肪が減少することになり、痩身効果があることもわかっています。

 精油は偽薬でもなければオカルトチックな怪しげな薬などではないのです。ここから先、少し難しい話になりますが、それを科学的な観点からお話ししていきたいと思います。(永井克也・富研一・ベンゼル智子=著『香りの効果を自律神経で解明!医者がすすめる科学的アロマセラピー』より)

 

柑橘類に多いのはd-リモネンだが、リモネン自体は他の精油にも入っている。セロリは多く含有している。

d-リモネンの作用には血圧降下作用もあると理解していたのだが、ここでの記述とは少し相容れないように思われる。匂いを嗅ぐだけということと飲む・食べるということで異なってくる点があるのかもしれない。

柑橘類の中でも、甘夏みかんや八朔はグレープフルーツに近いのではないかと思う。

降圧剤のカルシウム拮抗薬との併用には気をつけた方が良いかも知れない。これは、グレープフルーツが血圧を下げるというのではなく、薬の効き目を長引かせる成分を含有しているため、血圧が下がりすぎるという点が問題となると思われる。

 

ameblo.jp

myrtus77.hatenablog.com

f:id:myrtus77:20210407210935j:plain