風の匂いの中に

『我らは神の中に生き、動き、存在する』(使徒言行録17:28)

免疫と発熱と過酸化水素についてのリンクによるメモ

 

免疫をになう細胞「マクロファージ」が体温で活発になる仕組みを解明―過酸化水素によって温度センサーTRPM2がスイッチ・オンする分子メカニズム―

2012年4月10日

免疫を担い病原体や異物と戦うマクロファージは、感染がおこった場所でまっさきに病原体や異物を食べて戦います。その際、マクロファージは殺菌のために活性酸素を産生しますが、活性酸素の殺菌以外のはたらき、とくに体温を感じる温度センサーとのかかわりは知られていませんでした。今回、自然科学研究機構・生理学研究所(岡崎統合バイオサイエンスセンター)の加塩麻紀子研究員と富永真琴教授は、免疫反応によって産生される過酸化水素活性酸素の一種)によって温度センサーであるTRPM2(トリップ・エムツー)が体温で活性化するようになる仕組み、そしてTRPM2が体温を感じてマクロファージの働きを調節する仕組みを明らかにしました。本研究結果は、米国科学アカデミー紀要(電子版 4月9日)に掲載されます。

 

研究グループは、マクロファージの免疫反応により産生される過酸化水素と、体温の温度センサーであるTRPM2とのかかわりに注目。温度センサーであるTRPM2は活性化物質が存在しない状態では48℃付近の高い温度にしか反応しないので、ふだんは体温では活性化しませんが(図1)、過酸化水素が産生されると平熱域(37℃)でも活性化するようになることをつきとめました。つまり、過酸化水素がTRPM2の働きを調節する「スイッチ」として働くことを発見しました。さらに、スイッチ・オンされたTRPM2の働きによって、異物を食べるマクロファージのはたらきが、発熱域(38.5℃)で、より増強することをつきとめました(図2)。

 

(略)

 

今回の発見

1.温度センサーであるTRPM2は活性化物質が存在しない状態では、体温域では活性化しませんが、マクロファージの免疫反応によって産生される過酸化水素があると、体温域でも反応するようになることがわかりました。

2.免疫を担うマクロファージの異物を貪食する反応は、TRPM2の働きによって、発熱域(38.5℃)で、より増強することがわかりました。

 

(略)

 

この研究の社会的意義

細菌とたたかうときに熱が出る意味とは?

今回の発見で、マクロファージのような免疫細胞が、細菌と戦う際、TRPM2の温度反応性の変化によって、体温でもその働きが活発になる仕組みが分かりました。
さらに、今回の研究では、過酸化水素のTRPM2に対する作用は、TRPM2そのものに対する“酸化”反応によることも分かりました。具体的に、過酸化水素がTRPM2のどこに作用しているのかも解明できました。このように、TRPM2機能調節の分子機構が明らかとなったことにより、マクロファージの働きを調節する新たな薬剤開発や治療戦略を提供できる可能性が考えられます。

 

今回発見した温度センサーTRPM2の働きは、私たちが細菌などに感染した際、発熱によって免疫力が上がるメカニズムの一つなのかもしれません。

 

図4 病気(病原体)とたたかうときに熱が出る意味

病気になったときに熱が出るのは、病気とたたかう力を強くするためなのかもしれないですね…

https://www.nips.ac.jp/sp/release/2012/04/_trpm2.html